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保護柴たちの未来を考える(前編)─そこに運命の出会いはあるのか─

犬が大好きなあなたと語りたい「保護犬」のこと。

■保護犬に柴犬が多い理由

 残念ながら、柴犬の保護犬はとても多い。神奈川県動物保護センターでは一時期柴犬や柴犬系雑種がほとんどという時期もあった。常に数頭はいるという。その理由を犬丸さんは考察する。

「そもそも飼育されてる母数が多いということもありますが、柴は子犬期にきちんと社会化やトレーニングをしないといけない犬種。かわいいだけで飼ってしまい、手に負えなくなって捨てられることもあるでしょう。また昔ながらの飼い方で外飼いされてることも他犬種より多く、逃げ出してもそのまま探してもらえないケースもあるのかと思います。
 日本では、譲渡されやすい保護犬の傾向として、若い小型の純血種、中型でも8キロ以下の犬が好まれます。小さな若い柴犬はいいのですが、サイズが大きい子や、シニアだったりするとセンターに長居している子もたくさんいます。性格の問題で残っているわけではないことがほとんどです。

 元保護犬の柴犬にはいい子たちが本当にたくさんいますよ! 柴犬の子犬は、たまらなく可愛いけど中身は小悪魔(笑)。社会化トレーニングや散歩にたっぷりと時間をかける余裕がない人には難しい犬種だと思います。でも、保護犬の柴なら社会化ができていることが多いので、比較的飼いやすいかも知れません。
 性格もある程度読めますし、成犬であればサイズも分かります。アクティブに暮らしたいなら若い成犬を、のんびり柴犬と暮らしたければシニアの子を迎えるなど、ご自身のライフスタイルに合った運命の柴犬を時間をかけて選ぶことをオススメします。
 サイズも性格もお顔立ちもいろんな子がいます。柴犬は長生きする子が多いです。子犬でなくてもたくさんの時間を共に過ごすことができますよ」
 

■保護犬を迎えるということ

 県や市の動物愛護センター等や動物保護団体等にいる保護犬には犬種の違いだけでなく、生い立ちによる性格の違いもある。
 迷い犬や野犬等、放浪しているところを保護された犬。虐待を受けた犬。悪徳ブリーダーの元で最低限の食事だけで産まされ続け、棄てられた犬。愛情は受けていたけれど、飼い主の事情で棄てられた犬。飼い主の飼育放棄(ネグレクト)により、愛情を知らないまま棄てられた犬……等々。

 その生い立ちの中で負った心の傷や生きるために培った強さはそれぞれで、性格に少なからず影響を与える。
 犬丸さんは、保護犬を迎えるときは絶対そのことも忘れないで欲しいと言う。

「保護犬たちはたいへん賢く愛情深い犬が多いと感じます。しかし、あっという間に懐く子もいれば、なじむまで時間のかかる子がいるのも事実です。
 ただ、時間をかけただけ心が通ったときの絆は宝物のような愛おしいものになります。
 保護犬でない犬に関してもそうですが、犬に対してあせらず、性格を見極めて寄り添うことがとても大切だと思います。
 多くの保護団体の方がおっしゃる大切な言葉があります。

“かわいそうだから”という理由で保護犬を迎えないでほしい。この犬と暮らしたい! と思ったら家族に迎えてください』と。
 本当にそのとおりです。

 そしてもう一つ大切なこと。
 保護犬を飼うことはステイタスではありません。保護犬も、生まれたときからずっと幸せな犬も、みんな同じ、いい意味で“ただの犬”です。保護犬を飼っている方が偉いとか、ペットショップから犬を迎えてしまった方がご自身を卑下するという最近の風潮はいかがなものでしょう。自分が迎えた犬を一生大切に愛せばいいだけです。次に飼う時にペットショップから迎えなければいいだけです。
 犬を飼うということは経済的にも生活面にもたいへん負担の増えることです。制限も増えます。
 保護犬が二度と保護犬にならないように、決して無理に保護犬を迎えないでください。“かわいそう”なだけの犬ではありません』

 そう、保護犬は特殊な犬なのではない。フラットな気持ちで、自分の運命の犬を探しに行くのがきっとベストだ。

 

 いかがでしたか。保護犬との生活を考えていらっしゃる方に向けて、次回(後編)は「保護犬の迎え方」についてお話したいと思います。どのようなマインドで、何を考えるべきか。ご期待ください。

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小西 秀司

こにし しゅうじ

作家・デザイナー・編集者

出版社での雑誌編集を経て、4年以上にもおよぶアジア放浪の旅へ。帰国後はフリーのエディトリアルデザイナーとして活躍しながらフレンチブルドッグ専門誌「BUHI」(オークラ出版)を創刊、現在も編集長を務める。犬に対する圧倒的な愛情、柔らかな感性が多くの犬好きの共感を呼び、ワークショップの開催やラジオ出演など多方面で活躍中。『柴犬ライフ』統括編集。

主な著書は「動物たちのお医者さん」(小学館)、「きみとさいごまで」(オークラ出版)「どうして こんなにも 犬たちは」(三交社)など。

 

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